嬉しい誤算ですが、水谷さんと北田君はこちらの想像よりはるかに早く打ち解けていたようでした。調性や構成面でわざと歪な曲を作っていったんですが、お二人ともノリノリでした。エグいシーンが多いからわざと綺麗な和音のシーンも足したりしていましたが、リハでそれがナンセンスで必要ない事がわかり、全体の半分くらい削除した曲もありました。
普段から、自分はフリージャズというものを形式化する事に強い抵抗があるため、今回は「フリーをやります」とか「ここをフリーにして下さい」とか一言も頼んでいません。しかし結果的に無調・リズム無しに展開した場面が非常に多く、そのサウンドが壮絶で突き抜けていてとても楽しかったです。二人のあまりの勢いに置いていかれそうになった瞬間もあった程です。
無調・リズム無しになるのは、未知の音・未知のリズムを求めて突き進んだ成れの果てで、以前から二人にそれぞれ感じていた「音で化かす」という妖術的な力は、未知なる音への探究心がずば抜けて強いという点に由来しているのではないかと気づき、少しだけ秘密が明かされたように感じました。
北田君は以前一度だけ共演した時や、伊藤志宏との「audace」ライブを観覧した時に「なんて潔い人なんだろう」と思ったのですが、数年振りにステージを共にして、さらにそれが強まっているのを感じました。
発する音を厳選した上で一切の責任を引き受け、発してしまった音には微塵の執着もない。既存のフレーズは解体されており、ただ今発したい音の連続で即興的に空間を作っていく。その姿勢にとても共感を持ってしまいます。今自分もセッティングの変化からフレーズの解体を図っていたりするので、久しぶりに会ったのにやっぱり同じような事を考えているのだなと嬉しくなりました。
水谷さんはやはり「ジャズベース」「ウッドベース」にとどまらず、明らかに「コントラバス」でした。
小編成にも関わらず、オーケストラのコントラバス領域にいてくれるので、結果バンドサウンドを実際より大きく見せられます。
どうしてもジャズの多くの現場ではベースアンプを使用、本来のコントラバスの鳴り以上のボリューム感で安定させる習慣があります。それは多くの場合、ドラムのせいなのですが(笑)。しかし水谷さんは、アンプを入れながらも過剰にボリュームを上げず、ベーシックな鳴らし方が極めて生音に近いサウンドで、ここぞというタイミングで物凄いアクセントを入れる。本来コントラバスという楽器が持つダイナミクスレンジとスピード感はこんなにも凄いのかという事がわかります。それを感じたければドラムが音量バランスを調整すればいいのです。
そして水谷さんは常にタイムや拍というより呼吸で音楽を進めていて、ここ1〜2年共演させてもらっている中で真横でそれを沢山学ばせてもらったので、大分グルーヴの呼吸が合うようになってきました。良いタイミングでこの日を迎えられたと思います。
メンバーを見据えたオリジナル製作については、今回は大成功でした。次への課題、学んだ事を挙げるとすれば、メンバーへもお客さんへも何の遠慮も必要なく、やりたい事を突き詰めればいいという事でした。やりたかったのが狸ならば、変に整えたりバランス取ったりせず、とことん狸をやって化かしまくればいいじゃん、とメンバーから教わりました。
とにかく、バカみたいに楽しかったです。
さて、間もなく橋本学trioライブです。
12月22日火曜日 外苑前Z.imagine
橋本学(打楽器)
伊藤志宏(piano)
織原良次(fretless-b)
19:30〜21:00 ¥3000
今や全国にファンのいる、脂の乗りまくった2人に、昔ながらのよしみでワガママ言いたい放題をするという贅沢な、橋本学唯一のレギュラーメンバー・バンドです。皆様是非お越し下さいませ!
0 件のコメント:
コメントを投稿