2021年6月12日土曜日

Trio Zero「Energetic Zero」ライナーノーツ 「コメツキムシ」


曲の冒頭のベース・リフが最初に出来ました。
白状すると、作曲当時ハマっていた音楽が矢野顕子さんの「Welcome Back」。あの不思議なスペース感と唐突なキメは作曲にもろに影響しています。当初、曲のメロディは完全に矢野さんの声で浮かんできました。
4ビートとも2ビートともレゲエとも言えないドラムについては、作曲当初は全くイメージが無く、バンド初演奏の日にメンバーに譜面を渡すまでドラムについては何も決めていませんでした。
しかし演奏を始めてみると、何も決めていなかったはずのドラム演奏が自分でびっくりする程自然にイメージが浮かぶという不思議体験をし、これ以降作曲の際には「ドラムをどうしようか」と決めなくなりました。ドラムがどうなるかはみんなで一緒にやってみてから、というスタンスですが、困った事はありません。
作曲当初からアレンジ・構成は変わっていません。ピアノソロからいきなりスウィングのリズムにした位。我がバンドの数少ない4ビート曲ですがコード進行がポップスぽいのであんまりジャズに聴こえないと思います。
タイトル「コメツキムシ」ですが、コメツキムシの特異な動き、wikiより
"天敵に見つかると足をすくめて偽死行動をとる(世に言う「死んだふり」)。その状態で、平らな場所で仰向けにしておくと跳びはね、腹を下にした姿勢に戻ることができる。"
これとイントロのピアノの反復フレーズのイメージが重なった、というだけです。たぶんコメツキムシは実際に見た事はありません。

Trio Zero「Energetic Zero」ライナーノーツ「一万年落下」

Trio Zero「Energetic Zero」CDの制作時にライナーノーツを自筆で書こうと思いましたが、どうせなら思う存分長文で各曲への思いを書きたいと思いまして、CDには曲解説は一切載せず、替わりにインターネット上に残す事にしました。
・1万年落下 
着想は梨木香歩さんの小説「裏庭」の一場面から。登場人物2人がどこかの崖から落下していく最中に会話をしています。「僕達はいったいどのくらい落ちているんだろう?」「きっともう一万年分くらい落ちているはずだよ」落ちている距離なのか時間なのか、その度合いを「一万年」と表現したことに感銘を受け、作曲するに至りました。
2〜3mの落下だと視覚的にも全てが高速で過ぎていきますが、一万年、となるとそうはいきません。フリーフォールの動画などでは地上の風景は静止したように見えます。重量加速度に従った高速とゆっくりと近づく地表と、何層にも重なる風景を音楽にしてみました。
ドラム演奏で高速部分を担当していますが、ジャズの4ビートと16ビートとテクノ・ドラムンベースのイメージが入り混じっています。ラストテーマ前は数少ない発明アルペジオドラムを曲の一部にしています。
「裏庭」は「一万年」の所まで読んでそこでストップしています(笑)。