2015年10月16日金曜日

vol.11で見えた橋ワタシ学sessionの目指すもの

 橋ワタシ学session vol.11「木」無事終了しました。連休最終日夜という難しい日程にもかかわらず来て下さった皆様には、感謝してもしきれません。

 本記事では、vol.11ライブを振り返りながら、今一度「橋ワタシ学session」というものの狙いを考察してみます。

 リスト
1.Wichita line man
2.Song for joy
3.Dindi
4.It might as well be spring
5.I'm so lonesome I could cry
6.The moon's a Harsh mistress
7.橋本タカスギ duo
8.Warm sonnet(Saki)
9.Iambic 9 poetry
10.トムがつかみかかる(橋本)
11.Overview(Saki)
12.Ballad of a sad young man
 アンコール
Tea for two

 橋ワタシ学sessionは2014年1月26日、「橋本学・柳隼一(p)・落合康介(b)」のピアノトリオから始まりました。コンセプトは「メンバー同士が初対面もしくはほとんど共演歴の無い、かつ1回きりのセッションを企画実行する」というものです。

YouTube再生リスト「橋ワタシ学session
 
 そのvol.1〜vol.11まで、橋本学人脈をフルに駆使して、延べ25人の音楽家に参加してもらいました。全員が一国一城の主クラスの音楽家だと自信を持って誇れるメンバーで、自分にとっては全てが忘れられないライブになりました。橋本もほぼ予備知識のない新鮮な人にお願いする場合もあれば、旧知の盟友同士をワクワクしながら組み合わせたり、はたまた学生時代から名前を知っている人に遂にお願いしてしまったり、いわば毎回が自分にとっては「夢の共演」です。そのワクワクをお客様とメンバーとで共有できれば、その日のライブは成功です。

 もう一つの目的は、これをきっかけに引き合わせた音楽家同士の繋がりが継続する事.。これがなんと同一メンバーで再演決定したライブが3組もありました。

 2014.1.26 vol.1 柳隼一・落合康介・橋本 → 2014.5.24東中野セロニアスで「柳隼一trio」として再演
    11.5 vol.5 田中信正・安ヵ川大樹・橋本 → 2016.11.26柏Nardisにて「安ヵ川大樹trio」として再演決定
 2015.4.19 番外「ラブ・イズ・ミラクル」 かなさし庸子・前原孝紀・橋本 → 2015.12.6昼外苑前Z.imagineにて「かなさし庸子ライブ」として再演決定

 お願いしたメンバーが今度は自らライブを組んでくれた、ここまで行けると本当に「橋ワタシ」冥利に尽きますね。 

 メンバーやテーマを決めるに当たって何をイメージするかというと、その人の出す音だけでなく、どちらかというと人となりから醸し出される空気感です。もちろんその空気感が音を支配しているのですが。
 知り合い同士ではなくても、空気感が似ている同士で組めば凄く一体感が生まれます。もしくは違う空気感同士で組み合わせてコントラストを狙う場合もあります。
 空気感第一なので、活動ジャンルや音楽的嗜好は、実はそれほど気にせず組んでしまいますが、皆さんその辺にはオープンなので(オープンな人にしかお願いしていないので)今のところは全てうまくいっています。

 さてやっと今回のvol.11「Saki Minamimoto・タカスギケイ」のお話に戻りますと、「空気感重視」の組み方が今回これ以上ないほどうまくいったと感じました。というよりむしろ、今回のライブを終えて、今まで空気感でメンバーを決めてきたんだなという事に気づきました。

 生き方や思想がしっかりとあって、それを歌に詩に乗せて発信してくるだろうSakiさんにマッチするのは誰か、そうなるとジャズにありがちな「難しいフレーズ」やら「テクニック偏重」は邪魔になってくる。しっかり包んでサポートしつつ、さりげなく刺激も提供できる人。海外在住のSakiさんがまとっている外国の空気感に馴染みの良い空気感の持ち主。ああこれはタカスギケイさんだなと。
 山あり谷あり、ハラハラドキドキしながらのライブも刺激的で良いのですが、今回のライブは「ただそこにいてくれる」安心感に包まれつつ、終了後は元気になっているという、まさに大きな「木」の下にいるようなライブができました。

       

 さて、次回vol.12が決まりました。もう2ヶ月切っています。

 橋ワタシ学session vol.12 「狸」

 橋本学(打楽器) 水谷浩章(b) 北田学(cl,b-cl) 


  12月2日水曜日 外苑前Z.imagine 19:30~21:30 \3000


 ついに大学ジャズ研の大先輩・水谷さんと「audace」の北田君を迎えました。実に実にシビアでストイック、それでいて遊び心もある空気感を醸し出します。

ご予約は zimagine@radio-zipangu.com もしくは 03-3796-6757 までよろしくお願い致します。





2015年10月11日日曜日

橋ワタシ学session vol.11「木」feat.Saki Minamimoto タカスギケイ

 さて、まもなく「橋ワタシ学session vol.11」です。  サンフランシスコから一時帰国中のSaki Minamimotoさんとタカスギケイさんとを橋渡します。
            

どんな人達かは参考動画で。Saki さんの現在のバンド、外国ですね。当たり前だ。

      

 新しいアルバムは、五感だけでなく実は十二感あるらしい感覚から作られた音楽との事です。打ち合わせという名の近況報告会では、意識の高すぎる良いお話をたくさん聞けました。

 一方タカスギさんはここ二年くらい、度々ご一緒しています。

            

 ソロギターほんとにかっこいいんですよね。

 お二人はボストンのバークリー音楽院に同時期にいたようなのですが、初対面だそうで。

 音楽的には二人で成り立ちそうな所ですが、ところがどっこい橋本が割り込みます。

         

 入んない方がいいかもしれませんね。

 内容は、Sakiさんのオリジナルとスタンダード、橋本オリジナルもやります。
 テーマは「」。土に根をおろし、ずっとそこにいてただただ見守り続ける。そういうメンバーでそういう音楽を演奏します。

 ボストン→東京→ニューヨーク→サンフランシスコで活動してきたSakiさんと、ボストン→サンパウロ→東京で活動してきたタカスギさん、そして関西→横浜→関東で活動してきた橋本といった実にインターナショナルなメンバーでお送りします。

2015年10月7日水曜日

発売間近・NHORHM

 この秋に発売される参加CD、2枚とも超お勧めです。
 本記事はその①「NHORHM」、ピアニスト西山瞳さんの「メタル・カヴァー・プロジェクト」です。



 名前の由来はメンバー西山瞳・織原良次(fl-b)・橋本学(ds)のイニシャルを並べてかつ、「New Heritage Of Real Heavy Metal」とのダブル・ミーニングになっています。それがたまたま「NWOBHM = New Wave Of British Heavy Metal」のパロディになってしまい、中高生時代にリズム&ドラムマガジンでよくNWOBHMの文字を見かけていた自分は、命名の知らせを聞いて懐かしくて爆笑してしまいました。

 各曲について、ネタバレにならない程度に、主にドラム演奏について記します。

1. In the Dead of Night イン・ザ・デッド・オブ・ナイト / U.K.
…UKといえばホールズワース・ブラフォード・ボジオ。シュールで頭脳派なイギリスのプログレ名手達へのオマージュを自分なりに演奏に込めました。

2. Walk ウォーク / Pantera

…パンテラほとんど知らないんですが、この曲のキーワードは「バカドラム」。バカ以上の事はできないという設定で臨みました。

3. Man On the Silver Mountain マン・オン・ザ・シルバー・マウンテン(銀嶺の覇者) / Rainbow

…ネタバレ防止と時代背景から「カラムーチョ・ジャズ・ドラミング」と言っときます。半スティックタイプです。ドラムソロではイチかバチかの奇跡の譜割りに成功し、解析採譜再現不可能ですすんません。

4. Skin O’ My Teethスキン・オー・マイ・ティース / Megadeth

…また違う種類の「バカドラムB」です。のっけからぶちかましてくれと言われてその通りやりました。フルショットで高速竹割タムおろし。

5. Fear of the Dark フィア・オブ・ザ・ダーク / Iron Maiden

…メタル・カヴァーなのに○○○を使った俺さすが!

6. Upper Levels アッパー・レヴェルズ / ANGRA 

…まるで文化祭の準備のようにスタジオで練習を重ねた長編難曲。頑張った!!20年目の文化祭。

7. 悪夢の輪舞曲 / BABYMETAL

…こういうアレンジが一番打楽器センスが問われます。ウエンブリーというとLevel 42が出てきてしまうフュージョン野郎です。

8. Demon's Eye デーモンズ・アイ / Deep Purple

…俺がむかし夕焼けだった頃~シャバダシャバダ~。

9. The Halfway to Babylon ザ・ハーフウェイ・トゥ・バビロン / 西山瞳

…もしもし母さん?オレ事故って500万必要なんだよ!

10. Green-Tinted Sixties Mind グリーンティンテッド・シックスティズ・マインド / Mr.BIG

…唯一リアルタイムでコピーバンドやった曲。一緒にやっていたベーシストが電気屋の息子。ライブ当日に店の備品の電動ドリル+割り箸+ピックでドリル奏法やろうとしたらリハで割り箸が折れるという良き思い出。ちなみに、曲の冒頭は笑っていいところなので笑って下さい。

 個人的な方針としては、西山さんのアレンジが練られていてあまりにも秀逸なため、そのアレンジをいかに面白くするかという事しか考えませんでした。1曲の中に色々な要素を盛り込む事はせず、敢えて焦点を絞り、しかるべきキャラを演じる。つまり10通りのアレンジがあるために10人分のキャラを使い分け演じ切りました。

 ではお前は一体何だと言われると、10人前のキャラの性格通りにドラミングを細かくコントロールできるのが強いて言えば自分の真骨頂ですね。擬態する時としない時とがあるカメレオンみたいな。この曲はまあまあ擬態とか。それとジャズならインプロヴァイズしなきゃ!という思いも全くなくて、あくまで楽曲アレンジが全て。曲によってはほぼ即興なし、ドラムスコアが頭の中で完成されてから録音した物もありました。このユニークな試みの中でただただ極端に演じる事がとても楽しかったです。

 もちろん、メタルを全く知らない方にも絶対に楽しめるように作ってあります。何しろこれに参加するまで自分はメタルには疎かった方ですし。同世代メンバーによる時代背景の特定を狙いながら、それぞれの個人的バックボーンが違うため、うまく三層の独自の音楽ができたように感じます。

 織原良次とのコンビは10数年に渡り数々のバンドでステージ・録音を共にしてきましたが、「こんな引き出しもあったのか!」と、ここに来て新たな可能性を感じました。ベース・ドラム内での自由度と柔軟性が大きな特徴ですが、それを西山さんがアレンジと演奏でしっかり受け止めて面白がってくれているトリオです。

 普段自分は、ジャンルの境界などは本来なくて、出生の異なった音楽同士がグラデュエーションで繋がっているだけだとの音楽観に基づいて、その中間色ゾーンでうろうろする活動をしています。今回「ジャズ」と「メタル」という距離感のある出生同士を架け橋するという事で、ジャズファン・メタルファンそれぞれに長い距離の中間色ゾーンの旅を楽しんで下さればと思います。

Amazon.co.jpアソシエイト

                


                      各界著名人からのコメント

 Amazing approach to Angra’s song
The original song is greatly influenced by latin fusion and it’s cool to listen to it in this Latin jazz format. 
Excellent arrangement.


KIKO LOUREIRO (ANGRA/MEGADETH) -

 NHORHMを聴いて、ヘビメタってこんなにお洒落になるって驚きました!とても素敵なアレンジばっかりです。メタラーの僕はずうと「ジャズの演奏者はメタルを音楽として認めてくれない」と思ったけど、このケースではメタルにたいしての熱心と尊敬が伝わって来た。そして伴奏のメロディセンスは原曲より面白いと思います!!マジで(笑) 


マーティ・フリードマン(ギタリスト) -


 ヘヴィメタルのカヴァーらしいけどな、オレはハシモトのこたぁよく知ってんだぜ。なんたってブラザーだからな。メガデスだろうがパンテラだろうが、ヤツは結局ハートはファンクドラマーなのさ。1拍目にハイハットオープンをヒットしてるだろ?
ラストチューンがマイベストだ。サックスが最高にファンキーでクールだ。メイシオ・パーカーもブルーフェイスだぜ!ネクストレコーディングはファンク・カヴァーをやってオレを雇ってくれよな。もうサイドビジネスはウンザリだ!

-Dr.M (ドラマー、インタビュアー、カプセルホテル使用人)-




 マン・オン・ザ・シルバー・マウンテンとは私の事だ。日本語訳が銀嶺となっているが誤訳で、あれは「銀座」だ。君たちには馴染みがないだろうが、山は1座・2座と数えるのだ。銀座…それは猛吹雪の中でピッケルとヘッドランプを無くし、数々の登山家を飲み込んだ「松坂屋南西壁」に3日3晩ビバークしたあげく気がついたら「ツキジケイサツショ・ベースキャンプ」に救助されていたという苦い経験をした。登山SNS「ヤマレコ」に記録をアップしても拍手が2つしか付かなかったのも、また苦い経験だ。しかし、誰かが私の記録に注目して歌にしてくれたのだろう。


-84mo10【はしもと】(登山家)-