2016年4月4日月曜日

長野に拠点を移しました

よくお会いする関係者の皆様には既にお伝えしましたが、私橋本学はこのたび千葉から長野県富士見町という所に移住しました。
どの辺かというと、この近くです。
これがあながち冗談ではなくて、実はこの山「西岳」登山のために度々訪れていた登山口「富士見高原リゾート」があるのが富士見町です。

山好きが高じて山の麓に移り住んだ、と言っても、これもあながち間違いではありません。
正確には、相方主導で先に相方が現地で就職を決め、それを機に人間と動物達の大移住を決行したのでありました。

新しい家は八ヶ岳側ではなく、反対側の南アルプスの麓です。
これがゴミ捨て場からの景色。
なんという山萌え!!

うちの中からはこんな感じ。
つまり山に住み始めました。

少し下りた所からの甲斐駒ケ岳。

わかりやすく言うと「南アルプスの天然水で風呂を浴びている」ような立地で、その風呂をソデにして車で5分の温泉に2回も入りに行きました。

あとはこれ、山梨長野県下をほぼ独占状態の一大コンツェルン・巨大財閥「ハッピードリンクショップ」
山梨長野へ登山に通う中で数知れず見かけてニヤニヤしていた物件が、まさかうちへの道案内の目印になるとは。

食べ物もほぼ全ての食材が地産地消できるような所で、何を食べても美味しい。

さんざん自慢していますが、まだ正味4日間しか滞在できていません。うちの中の事も大部分家族に任せっきりで。

3月22日頃からの4日間で業者さんにもお願いしつつ、市川〜富士見の日帰り2回を含む3往復運転、その後も日替わりで行き来しつつ旧宅の清掃作業。ながらのライブ5本、レコーディング1件、レッスン7コマ。よくやった。まあ、スケジューリングミスですが、方々に迷惑をかけつつ引っ越し作業は終了しました。
はっきり言って指先は洗剤でボロボロ、大型ゴミを糸ノコとペンチで解体して腕はバキバキで、その足で演奏しに行って感じた事は
「音楽アンサンブルって面白いなあ」
「打楽器ってこんな音がするんだな、こんな事ができるんだな」
という事でした。
様々な作業と音楽の演奏が今までに無いほどニュートラルに並びました。

これは決してプロミュージシャンとしてネガティブな事ではなく、むしろこの客観性こそ音楽製作者として、世に出す側としては必要な事なんじゃないか。
「百姓」というのは「百の仕事を持つ人」という意味だそうです。百の仕事全てに全力を尽くすには、まず百の仕事全てを並列に捉える事が前提です。
百の仕事の1つとして音楽製作を捉えられる位ニュートラルになれれば、それは物凄いものができるんじゃないか、という人体実験です。

とにかくもう、始まっていると感じます。

並列になれば関連付けもできる。DIYを覚えつつ、オリジナル楽器製作が当面の目標です。

今後の活動予定を考えながら、仕事上で大変お世話になっている某る方へ長野移住の報告を電話したのですが、その中で思わず「僕はもうあんまり執着がないんです」と言い切っていました。後で自分でも不思議になり、何への執着が無いのか随分考えました。それは東京への執着なのか、今貰えている仕事への執着なのか、金への執着なのか。
出た結論としては、全ての執着心そのものが一気に薄まっているという事でした。ただここにいるだけで満足していて、周りに魅力的な事があると上乗せで幸せになる。しかしそれを失う事は以前より怖くはない。
まあこれも、移住ハイという一過性のものかもしれませんが。
執着はないけど、やりたい事はたくさんある現在の心境です。

ただし、今一つだけどうしても欲しいものがあります。
拠点を移すという事で、今後は東京での活動は減っていきますが、長野県内及び甲信越地方での活動を盛んに行っていきたいと思っています。
というわけで
長野甲信越地区での打楽器演奏の仕事が欲しい!
ので誰か下さい。松本や甲府くらいまでなら下道でサクッと日帰りできますので。

差し当たって今月はまだ東京でたくさんライブをやります。全てが出張です。どうぞ見に来てやって下さい。



2016年3月5日土曜日

3月ライブ・全紹介

スケジュール更新が追いつかず、すみません。現在ツアー先のため、こちらに全ライブご紹介します。

まずは8日火曜日、銀座No Birdにて中尾真喜group。録音を済ませ、4月にCD発売が決まっています。固定メンバーでバンドサウンドも既に出来上がっており、私はといえばパーカッションフル動員で、ジャズ・ヴォーカルの伴奏としてはありえないアプローチの自由を与えられています。最近では珍しいスタンダード多めな感じです。

12日土曜日は新宿ピットイン昼の部NHORHM+橋爪亮督(ts)・小田朋美(vo)。昨年の大仕事の1つ、西山瞳(p)さんのメタル・カヴァーのピアノ・トリオにCD参加メンバーのゲストが加わる特別企画。小田さんは個人的にはライブ初共演になります。初共演と、多分2曲は新作をやると思うので、緊張感溢れる良いライブになりそうです。

16日水曜日は、先のNHORHMライブのメンバーが3人もいますが、某ジャズレビュー曰く「最左翼テナー」橋爪亮督(ts)group@江古田そるとぴーなつです。かれこれ13年も同じメンバーでやっておりますと、メンバーお互いのコンビネーションの自由度が途方もないレベルになってしまい、それが独自色になって現れています。橋爪さん含め全員が背景のような、西洋文化と侘び寂びを行き来するようなサウンドをお楽しみ下さい。

17日木曜日は外苑前Z.imagineにて橋本学solo「数」です。単純に1とか2といった数字だけでなく、数に纏わる全てのテーマの中から抜粋して打楽器の音にしていきます。例えば「0」の概念を突き詰めると大変に面白いし、方程式を音楽に応用するとか、エラトステネスって誰だよみたいな話とかですね。1人っきりのライブは年に1回か2回、現在打楽器で出せる音の種類の150%ぐらい絞り出すので、ご期待下さい!

21日月曜祝日、吉祥寺サムタイム昼の部は佐藤達哉(ts)quartet。もう2年位レギュラーでやらせていただいています。とにかくアレンジが凝っており一筋縄ではいきません。ジャズはジャズでもアドリブ頼りではなく楽曲の流れで聴かせるジャズになっているところがやっていて楽しいです。

26日土曜日、今月2回目銀座No Birdで早川咲(vo)group。どちらかというとPops,R&Bなサウンドですが、橋本は本来こういうグルーヴメインの歌モノ音楽をやりたくて仕方なかったので、このユニットは大変楽しくやらせていただいています。橋本トリオや作戦失敗トリオを先に聴かれると「ウソつけ!」と思われますが本当です。中学高校時代はマイケル、ジャネットのジャクソン兄弟やJBを愛聴しました。昨年自分で企画したらなぜか頭がアフロになってしまっただけです。

27日日曜日、西荒井カフェ・クレールで安ヵ川大樹(b)trio w.田窪寛之(p)。2016年から新メンバーのトリオ、田窪君の端正かつ潔いプレイが安ヵ川さんの志すサウンドに絶妙にマッチしてきた感じです。レコーディングも控えており、新曲が続々登場中です。

28日月曜日は銀座シグナス、藍美代子(vo) w.嶋津健一trioです。昨年末頃にヤフーニュースで近況が伝えられており、現在は銀座でお店を経営されているとの事。数年振りにご一緒します。こう見えてオーソドックスなジャズ・ヴォーカルの伴奏も好きなんです。信じて貰えないかもですが。

31日関内Jazz Is田中信正(p)作戦失敗トリオです。この記事を書いている3月5日現在ツアー中ですが、大変な事になっています。アルバム収録時よりユーモアも狂気も1.5倍くらいに割り増しです。新曲「Little Circle Kids(ちびまる子ちゃん)」が難しすぎる!!

っていうか長えよ!!という記事になりましたが、ライブ本数は少ないです。それだけ1本ずつのライブに思い入れがあり、メンバーに恵まれており、内容の濃いライブになる予定です。
皆様のお越しをお待ちしています。



2016年2月20日土曜日

ベジタリアンのための自作塩ラーメン・完全版レシピ

突然ですが、以前作製しました「ベジタリアンのための自作ラーメン」の続編です。以前は醤油ラーメンでしたが、今度はより難易度の高い塩ラーメンに挑戦しました。
ラーメンマニアであれば、塩ラーメンのコクと旨味を出すのがいかに難しいか、当然理解されていることでしょう。それを動物性原料不使用で素人が、となると前代未聞です。

以下が原料、にんにく・生姜・ネギ・豆苗・エリンギ・えのき、あと画像にありませんがゴボウを使いました。

では、まずエリンギチャーシューから。醤油・酒・砂糖で油は使わず、なめたけを作るつもりで。炙りチャーシューにするのでなめたけよりは強めに火を入れ、焦げ目を少しつけるくらいでも良いです。

おお、実にウマそうだ!!

フライパンに残ったものを水ですくい取り、スープ作製予定鍋に入れます。フライパンで行われる様々な野菜模様、調味料模様、加熱模様の一連の歴史は全てスープに還元します。
これは、タレとスープを全て寸胴で合わせる飛騨高山ラーメン方式、もしくはスープ具材全てを中華鍋で調理する反町たんたん方式から学んだ技法です。
反町たんたんの職人さんのラーメン作製からは見ているだけで多くの事を学びました。手早く・正確に・少ない機材でという心構えは「タンマチタンタニズム」としてしっかり私に受け継がれました。他は閉店した元祖小鍋系の笹塚「ゼンベイ」の「ゼンベイズム」、オシャレウマい新代田「Bassanova」の「バサノビズム」、横浜上星川の家系ラーメンの頂点「寿々喜家」の「スズキオロジー」が、私のラーメン作製哲学の主幹をなしています。

鍋に、前日から昆布を浸した水を入れ、えのき・ゴボウを入れて加熱。出汁を取ります。
ゴボウの笹掻きが出来ないので細切りです。笹掻き技術はラーメン作製には必要ありません。そんな暇があれば荻窪・春木屋の平ザル上回転湯切りを学ぶべきです。ただし春木屋から価格設定だけは学んではいけません。

私の料理の7割に登場する、ゴマ油での「焦がしネギ」しかし今日はスープを清湯にするために弱火維持、焦がしてはいけません。今回最も気を配る所です

続いてにんにく・生姜を刻んで投入。
ネギが少し焦げていますが、焦げも旨味である事をインドカレーの達人から学んだ事があります

さあ今日はどんな絶品のインドカレーが出来るのか、今から楽しみです。
ウソです。

豆苗・塩を加えます。

スープ鍋に追加します。

ここでも、フライパンの歴史をすくい取りスープに還元します。

塩を少しずつ加えていき、味を整えます。これでスープは完成。

続いて、パスタを重曹で茹でます。参考資料はこちらをご覧下さい。

パスタがパスタとして調理されない事に反乱を起こし、吹きこぼれそうになります。

反乱はまだおさまらず、見た目はまだパスタですが、不本意ながら中華麺的なかんすいの香りがしてきます。

全てを盛り付け、完成。これが前人未到というかニッチすぎるというか、ベジタリアン塩ラーメンの完成形です。
      

      

      

実食した感想は、きのこや香味野菜、ゴボウの旨味がぎっしり。それでいてちゃんと中華スープでありました。料理が得意というわけではありませんが、ラーメン作製・再現にかけては誰にも負けない執念があるようです。
今後の課題としては、もう少しB級グルメ的なフックを増やすために、塩系発酵調味料を加えたいですね。塩麹とか。

しかし、料理とは、1+1が必ずしも2にならないとつくづく思います。
塩辛くなり過ぎたから砂糖を入れる、とかは何も解決にならないし、加熱具合や素材の切り方1つで全く違う答えが導かれます。
足し算や引き算、掛け算割り算だけではとても無理ですが、安定した味を提供できるプロの料理人は、ある程度の方程式を皆持っているようです。そのさじ加減はまちまちで、コンディションを見ながら的確に暗算してしまう達人もいれば、データをとことん厳格に取り、精密な方程式を構築している料理人もいるでしょう。

1+1、足し算引き算、暗算、方程式…というわけで、3月17日木曜日、「数」にまつわる打楽器ソロをやります








まさかこの記事がこんなオチだとは誰も思うまい!!!

















2016年2月2日火曜日

2015年ドラム・セッティング改革のあゆみ

 2015年はドラムセットの解体再構築が順調に進みまして、まずライドの位置を真正面にしました。それに伴いハイ・タムを右にずらしました。以下は田中信正トリオ「作戦失敗」レコーディング時。


 これにより、シンバルレガート時の右腕が外に突っ張る感じがなくなり、呼吸が楽になり、場合によっては左手でレガート・カップが叩けるようになりました。
何より、既存の使い古されたドラム・フレーズがまともに叩けなくなり、脳と神経がエラーを起こす事を大変楽しめました。

 こちらはその2ヶ月後くらい、横濱エアジンにて。左のクラッシュシンバルが立ってきましたね。
 

 この狙いは「裏拳」です。画像の手首は逆ですが、力の投げ出し方は裏拳と同じです。


 見た目と音にインパクトを持たせたかったからです。

 さらに進んでバラバラ事件。バスドラ床置き、ハイハットは踏めない位置に。行川さをりorbiontにおけるセッティング。

この日はものすごく楽しかった。メンバーも良かったです。もうドラムの機能はほぼありません。

 最後に年末の橋本学trio。ついに木琴がメインテーブルに乗りました。

音程があるかないかの境目をウロウロするのがとても新鮮で楽しかったです。

 以上2015年のセッティング改革の歴史でした。ドラムセットなんてたかだか100年ちょっとの歴史、セッティングはまだまだ自由でいいんじゃない?と思って始めたセッティング改革。2016年もこのまま突き進んで一発目はsoloです。

 チラシのデザインの意味は

ねずみ講のように皆さんが次々にお友達に声をかけてライブにお越しいただければ、私は大観衆の前で独演できて嬉しい”

です。

ウソです。

2015年12月31日木曜日

12/22 おもしろかった

 はしもとまなぶトリオ 「かくれんぼ」しゅうりょうしました。きてくれたみんな どうもありがとうございました。  

 もっきんは きんちょうしたけど うまくできました。

  しこうくんも りょうじくんも じょうずに がっきを ひいていました。

  まちがえて はんそでを きちゃったから さむかったです。

  ぼくが もっきんで だぶるぱらでぃどる を やったら しこうくんが わらっていました。

  おもしろかった。

  また よやく してね。

  …さて、そろそろ辛くなってきたので文体を戻します。 2015年は橋本学trio再開の年でした。橋本学trioを「一時解散」したのが2012年1月13日。 再開したのが今年の2月1日。再開させる意味を体現すべく緊張の中での再スタート、確かな手応えとともにストーリー性の希薄さを反省し、以後3回はストーリーの練り上げに集中してライブに向かっていく方法論を用いました。

 以下が最新の演奏、2015年12月22日。



 おそらくこれが最古の動画、2009年11月27日。



 下の動画の当時から、メンバーの2人は素晴らしく、また共に橋本学の良き理解者だったのですが、いかんせんリーダーの自分の舵取りが、どうも表面的な音に終始していたのでありました。その日のテーマがあるわけもなく、毎回あまり代わり映えしないセットリストだったような。楽しかったし忘れられないライブもいくつもあったのですが、リーダーとして次に進むには一度リセットする必要がありました。いくらファミコン直撃世代といえど、現実でリセットボタンを押す事は勇気が要るものです。

 その後、打楽器ソロライブと橋ワタシ学sessionで、毎回のライブをゼロから立ち上げる経験を積み上げ、リーダーとして表現の幅は広がった手応えがあります。アフロをかぶったり全身冬山装備したりといったアホな事から、「1曲1音!」みたいなストイックな音場、全く逆に弾きまくり叩きまくりのsession、初めて共演する楽器…様々なリーダー稼業をする事で得られたものは「突き抜けた表現を求める嗅覚」です。

 そうして橋本学trioに帰ってきて、ではこの3人でどんな突き抜け方をしようか?と考えました。2月1日の再開ライブの日を終えてその時は「我々の一番の得意分野はイメージのきっかけになる音を作ること、ならばサウンドトラックのようなライブにしよう。それもとびきり美しいやつ!」と決意しました。
 その決意の元に5月22日「Timelapse」8月12日「The Wild Sea」と行いました。このMCなしのスタイル、こだわり抜いた選曲と曲順はメンバーにもお客様にもとても好評で、両日ともに濃密な良いライブができました。演者も聴き手も90分間大変な緊張を強いられる事になりますが、それは承知の上でやらせていただきました。
 ただ、聴く側は目の前の演奏から脱線して、いろんな事に思いを巡らせて下さって構いません。むしろそれが狙いの一つであるので。「出演者公認の、演奏に集中しなくてもいいライブ」です。

 さて12月22日、テーマは「かくれんぼ」にしました。チラシのデザインからイメージ・ストーリーを立ち上げ、新曲「タビビトノキ」を書き下ろし、当日は童心の象徴として木琴メインのドラム・セッティングにし、木琴に始まり木琴に終わるライブにしました。

                      

 イメージを喚起するサウンドの美しさで突き抜けるはずが、企画ストーリー上どちらかというと自分の木琴および打楽器演奏がだいぶアホな方向に突き抜けてしまいました。しかしメンバー2人はそれをゲラゲラ笑いながら楽しんで創造的に受け止めてくれました。
 凄く良い意味で3人とも歳をとり、お互いの違いが増した上で認め合えているな、それだけの余裕と余白とともに演奏できているなと実感した1日でありました。一度解散して距離を置いた事で、より違いがはっきりし、互いに認識できるようになったと思います。

 上に貼った2つの動画のサウンドは、似ているようで全く別物です。一時解散して1年くらいたち、過去の橋本学trioの録音を聴いた時、新しい音楽的アイディアや楽曲が湯水のように湧いてきて「やっぱいいバンドだったな~」と思っていたんですが、再開した後に解散前の音源、例えば下の2009年頃のtrioの音を聴いても、もう何も生まれないし「あー頑張ってたなー」としか感じない。頑張りすぎていて余裕がなく、聴いててちょっとしんどくなってくる。演奏していても「こうならなきゃいけない!」みたいなのが今は全くないですしね。

 結論としては「いっかい かいさんしてよかったです もっと あほな ことを やりたいです」。

 次回橋本学trioは4月14日木曜日外苑前Z.imagine、木琴で泣ける曲を作る事が目標です!


2015年12月8日火曜日

橋ワタシsession「狸」後記



  橋本学・水谷浩章・北田学による初顔合わせセッション「狸」無事終了しました。お越し下さいました皆様には深く感謝申し上げます。

  嬉しい誤算ですが、水谷さんと北田君はこちらの想像よりはるかに早く打ち解けていたようでした。調性や構成面でわざと歪な曲を作っていったんですが、お二人ともノリノリでした。エグいシーンが多いからわざと綺麗な和音のシーンも足したりしていましたが、リハでそれがナンセンスで必要ない事がわかり、全体の半分くらい削除した曲もありました。

  普段から、自分はフリージャズというものを形式化する事に強い抵抗があるため、今回は「フリーをやります」とか「ここをフリーにして下さい」とか一言も頼んでいません。しかし結果的に無調・リズム無しに展開した場面が非常に多く、そのサウンドが壮絶で突き抜けていてとても楽しかったです。二人のあまりの勢いに置いていかれそうになった瞬間もあった程です。
  無調・リズム無しになるのは、未知の音・未知のリズムを求めて突き進んだ成れの果てで、以前から二人にそれぞれ感じていた「音で化かす」という妖術的な力は、未知なる音への探究心がずば抜けて強いという点に由来しているのではないかと気づき、少しだけ秘密が明かされたように感じました。

  北田君は以前一度だけ共演した時や、伊藤志宏との「audace」ライブを観覧した時に「なんて潔い人なんだろう」と思ったのですが、数年振りにステージを共にして、さらにそれが強まっているのを感じました。
  発する音を厳選した上で一切の責任を引き受け、発してしまった音には微塵の執着もない。既存のフレーズは解体されており、ただ今発したい音の連続で即興的に空間を作っていく。その姿勢にとても共感を持ってしまいます。今自分もセッティングの変化からフレーズの解体を図っていたりするので、久しぶりに会ったのにやっぱり同じような事を考えているのだなと嬉しくなりました。

  水谷さんはやはり「ジャズベース」「ウッドベース」にとどまらず、明らかに「コントラバス」でした。
小編成にも関わらず、オーケストラのコントラバス領域にいてくれるので、結果バンドサウンドを実際より大きく見せられます。
  どうしてもジャズの多くの現場ではベースアンプを使用、本来のコントラバスの鳴り以上のボリューム感で安定させる習慣があります。それは多くの場合、ドラムのせいなのですが(笑)。しかし水谷さんは、アンプを入れながらも過剰にボリュームを上げず、ベーシックな鳴らし方が極めて生音に近いサウンドで、ここぞというタイミングで物凄いアクセントを入れる。本来コントラバスという楽器が持つダイナミクスレンジとスピード感はこんなにも凄いのかという事がわかります。それを感じたければドラムが音量バランスを調整すればいいのです。
  そして水谷さんは常にタイムや拍というより呼吸で音楽を進めていて、ここ1〜2年共演させてもらっている中で真横でそれを沢山学ばせてもらったので、大分グルーヴの呼吸が合うようになってきました。良いタイミングでこの日を迎えられたと思います。

  メンバーを見据えたオリジナル製作については、今回は大成功でした。次への課題、学んだ事を挙げるとすれば、メンバーへもお客さんへも何の遠慮も必要なく、やりたい事を突き詰めればいいという事でした。やりたかったのが狸ならば、変に整えたりバランス取ったりせず、とことん狸をやって化かしまくればいいじゃん、とメンバーから教わりました。

  とにかく、バカみたいに楽しかったです。

  さて、間もなく橋本学trioライブです。

          12月22日火曜日 外苑前Z.imagine

           橋本学(打楽器)
           伊藤志宏(piano)
           織原良次(fretless-b)

           19:30〜21:00 ¥3000

  今や全国にファンのいる、脂の乗りまくった2人に、昔ながらのよしみでワガママ言いたい放題をするという贅沢な、橋本学唯一のレギュラーメンバー・バンドです。皆様是非お越し下さいませ!







2015年11月1日日曜日

発売間近その2・田中信正trio「作戦失敗」

  11月11日、以前からツイッターでお知らせしていました田中信正trioのCD「作戦失敗」がついにリリースされます。

  だいたいアルバムタイトルに「作戦失敗」というのは聞いた事がないですが、非常にインパクトがあります。ですが、下手したらタイトルを上回る程の、インパクトのある内容になっています。

  本作はフリー・ジャズではありません。オーソドックスなジャズでもありません。具体的には田中信正オリジナルとカヴァーですが、カヴァーも原形をとどめないオリジナルに近いものです。
  別の言葉で言うと、音楽家・田中信正の独自の世界観を、落合康介と橋本学とで忠実に表現し拡大したもの です。個人的には「狂気とユーモアの間(はざま)」というキャッチコピーを付けたい。

  ジャンルとしてはコンテンポラリー・ジャズなのかも知れませんが、リスナーとしても聴いた事がない音楽です。古今東西ジャズからロック・ポップス・テクノ・民族音楽まであらゆる種類の音楽は聴いてきたつもりなんですが。

  田中信正さんとは、当初デュオでライブをやっていました。



  動画は違いますが、当時から譜面が4枚くらいのスコアになっているオリジナルをやっていました。あまりに独自性が高く、かつ自由にやらせて貰えていたので、この面白さを強調するには打楽器パートも自分でスコアを作るしかないと思い、ライブで曲を把握していくに従って徐々に打楽器パートを脳内で作っていきました。
  ある時「ベースを入れてトリオでやりたい」と言われ、「これをトリオでやったら凄い事になるな」と思いつつ、果たしてこの凄まじい音楽に適任者はいるのかとも思いました。
しかし後日、落合康介はどうかと相談されました。自分としては大好きなベーシストであり(ライブをお願いした「橋ワタシ学session vol.1」↓)



彼のインパクトのある音色とガッツ、イマジネーションがあればきっとトリオとして成立すると思い、諸手を上げて賛成しました。こうして田中信正トリオは結成されました。

  ではまた1曲ずつ、打楽器視点からコメントします。

1.サゾエ
  もともと、国民的キャラそのままの「サザ◯さん」というタイトルでした。曲は全くのオリジナルですが、タイトルがさすがにまずいとの事で「サゾエ」になりました。しかし、アドリブその他に「サ◯エさん」のDNAが散りばめられております。

2.フラワー・アブストラクション VII
  Saxの井上淑彦さんに捧げられた曲。譜面の途中に「いのうえさん」と書かれた箇所がありました。さて、どこでしょう?CDを聴いて探してみて下さい。拍子を数えて演奏すると必ず間違えます。

3.レントより早く
  新宿ピットイン等でいつも行うハンドマイク奏法を、ライブに極めて近い状況で録音させてもらいました。美しい曲。1ミリもビートを刻んでいません。
  
4.フットステップス・オブ・ジャパニーズ・ショート・テイル
  1発OKのユーモラスな曲です。ハーモニーが独特です。

5.作戦失敗
  レコーディング直前の一か八かのアレンジ改変。技術的難易度が高く、レコーディング時もアレンジに翻弄されつつ、綱渡り的に完走を果たしましたが、タイトル曲に相応しい限界点のスリルと緊張感が記録できたドキュメントです。こんなドラムソロは二度と叩けない!

6.セルキーズ・ダンス
  打楽器のキーが曲のキーに一致していて気持ちが良い。アレがレコーディングでこんなに活躍したのは初めてかな?

7.奇走曲
  2分30秒とは思えない急展開。制御不可能かと思われるマシンを、安全装置シートベルト無しで制御し切ったドキュメント。急発進→急停止。

8.ゼア・ウィル・ネバー・ビー・アナザー・ユー
 「オリジナル書いていたらどうしてもアナザーユーになっちゃったんだよね〜」というわけで突然ですがスタンダード・ジャズです。しかし原形はとどめていません。

9.タベルリンゴ
  アナグラムで有名曲タイトルが出てきますが、あくまで「食べる林檎」です。これも拍子を数えたら負け。本当は恐ろしいグリム童話。

10.夏の星座
  打楽器の役どころは「日本の夏」ですねえ。これはアート・ブレイキーでも絶対演奏できないね!

  公式フライヤーにレコ発情報もあります。





  ライブの現場ではさらに進展がありますが、レコーディングではこれらの曲達の1つの完成形が余す所なくお楽しみ頂けます。
  レーベル「ローヴィング・スピリッツ」のオーナー・富谷さんがこの田中信正trioの最大の理解者であり、一番面白がってくれていました。ありがたい事です。兎に角、このとんでもない作品に参加できて、世に出てしまった事が驚きです。あとは皆様、是非聴いてみて下さい!
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